アトピーと食品

アトピー貴陽石


アトピーと食品

厚生労働省で食物等によるアナフィラキシー反応の原因物質(アレルゲン)の確定、予防・予知法の確立に関する研究が行なわれその結果が報告された。研究の目的は、1)食物等によるアナフィラキシー(食物依存性運動誘発性アナフィラキシーも含む)などの食物アレルギーの疫学等調査に基づいた適切な施策・対処法の確立と原因物質を確定する診断方法の確立、2)食物アレルギーの発症・寛解機序の解明による予知・予防法の確立、3)原因物質の抗原解析によるアレルゲンの交差抗原性の解明と原因物質の低減化に関する研究。

平成17年食物アレルギー全国モニタリング調査(厚生労働省)

1)食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn)の疫学調査

神奈川県立高等学校の保健体育科教諭を対象に疫学調査を実施し154校中120校から回答があり87,218名中、FEIAnが疑われた生徒は4名(男:女=0:4)有病率0.0046%と以前養護教諭を対象に行った調査の約半分であった。EIAn、FEIAnの認知度は11%と低く見逃されている可能性も考えられた。発症時の運動は陸上競技2名、球技1名、バドミントン1名であった。原因食物はそば1名、魚介類が1名、不明2名でショックは2例に認められた。

2)FEIAn診断のための誘発試験の標準化

報告論文の解析から誘発試験の負荷条件が標準化されておらず、運動負荷はトレッドミルで運動対応能力に合わせて負荷量を調整し、食物は十分量摂取させ、食物+運動で誘発されない場合にはアスピリン前投与をすべきであることが明らかになった。

3)食物等によるアナフィラキシーによる死亡例に関する研究(玉置)

食物アレルギーによるアナフィラキシーの入院加療例と死亡例を33の食物アレルギー患者会を通じて調査し、該当した入院106例、死亡2例のうち同意を得た患者の担当医師に調査票を送付し40件(45症例)の回答を得た。受診時に心肺機能停止の者はなく、アナフィラキシーショックを発症していたのは23例(男:女=15:8)で初発例は11例(48%)、当該食品について食物アレルギーの診断を受けていたのは17例(74%)、気管支喘息の既往があったのは11例(48%)であった。

4)食物等によるアナフィラキシーの予防・寛解誘導に関する研究(宇理須)

鶏卵アレルギー患者を対象として、卵白抗原刺激よるCD4陽性細胞応答のトランスクリプトーム解析を、DNAマイクロアレイを用いて行った。卵白抗原刺激の有無による転写量の違いに着目し、抗原刺激により鶏卵アレルギー患者で発現が1.5倍以上に増加し、非アレルギー対照では増加しない遺伝子を43個選択した。これらの遺伝子の発現をReal-time PCRを用いて検証したところ、cytokine inducible SH2-containing protein(CISH)など3遺伝子が抗原刺激後の有意な増加(p<0.01)を示した。このうち抗原刺激後のCISHの反応は、鶏卵アレルギー患者で、非アレルギー対照に比べて、有意(p<0.01)に強く認められた。

5)食物アレルゲンの免疫応答および非即時型反応に関する研究(近藤)

経口減感作を3名の牛乳アレルギー患者に行い、アレルギー症状の悪化を認めることなく3名とも最終的に1回100mlの牛乳摂取まで可能になった。それに伴い、調節性T細胞の増加傾向を認め、免疫寛容誘導に調節性T細胞の関与が推測された。さらに、T細胞エピトープが破壊され、B細胞エピトープは保たれているβ―ラクトグロブリンの分解物を調整した。この分解物はB細胞エピトープが破壊されているので、アナフィラキシーは誘導されにくく、T細胞リセプターからの刺激が免疫寛容を誘導させる可能性が示唆された。

6)食物アレルギー実験モデルにおける予防・寛解誘導に関する研究(大嶋)

食物アレルギー患者で低アレルゲン化食品による経口トレランス誘導を検討するため、トランスジェニック(Tg)マウスを用いてOVA感作成立後の経口トレランス誘導を検証した。OVA感作でOVA特異的IgEはOVA特異的T細胞受容体Tgマウスが野生型より高値を示したが、下痢症状は軽く即時型アレルギー症状は抗原特異的IgEのみで規定されないと考えられた。OVA感作を行った野生型マウスの脾臓のCD8+細胞の輸注でOVA特異的T細胞受容体Tgマウスでの即時型アレルギー症状は抑制された。この機序は抗原特異的IgEの産生の抑制でなく、T細胞のサイトカイン産生能の変化が関与していることが示唆された。抗原特異的IgEが高値でも抗原特異的T細胞を制御することで即時型アレルギー症状が調節され、食物アレルギーの治療に調節性CD8+T細胞の選択的活性化能を保持した低アレルゲン化食品の開発が有用と考えられた。

7)食物等によるアナフィラキシーの原因物質・予後に関する研究(柴田)

乳幼児期の即時型小麦アレルギーにおいて低アレルゲン小麦負荷試験による過敏性確認と継続負荷試験による耐性化への影響を検討した。2歳以下の負荷陽性率が低く、その後の耐性化率が高かった。小麦アレルゲン蛋白の一つとしてプロテインZが確認された。小麦アナフィラキシー群でω-5グリアジンIgE抗体陽性率が高く、耐性化により同抗体の陰性化がみられ、臨床的に過敏性、耐性化判断に有用であった。

8)食物アレルゲンの抗原解析およびその低減化に関する研究(穐山)

魚類:ニジマスコラーゲンα2鎖の主要なIgE結合エピトープの絞込みに成功した。甲殻類:甲殻類アレルギー患者の一部はアルギニンキナーゼのほかに20 kDaの新規アレルゲンを認識した。寄生虫:アニサキス新規アレルゲンを同定し、そのリコンビナント体がアニサキスアレルギーの診断・治療に応用可能であることが示唆された。海産無脊椎動物:スルメイカ・トロポミオシンはメイラード反応の進行に伴って、ペプシン消化性が低減した。しかし、メイラード反応によって起こったアレルゲン性の低下は、ペプシンによるTMの消化後も維持されていた。豆乳:花粉症と関連するクラス2食物アレルギーに属し、果物アレルギーとも交差しうることが明らかになった。ふきのとう:アレルゲンとして、22kDaと10kDaの2つの強い抗原を見出した。果物:病害被害を受けたリンゴにおいてアレルゲンタンパク質の増大が認められた。大豆:油脂や乳化剤の存在下で、腸管からのアレルゲン吸収が著しく増加し、反対に食物繊維存在下で抑制されることが明らかとなった。ピーナッツ:主要アレルゲンAra h1の立体構造解明を目的に、リコンビナント体を大腸菌で作製し、結晶を得た。そば:加熱処理によりペプシン消化性が低下することが判明した。

9)食物アレルゲンの抗原解析・交差反応性に関する研究(赤澤)

交差反応性の有無の頻度を算出するために食物アレルギー患者で(1)鶏卵とイクラ24例 (2)ピーナッツとアーモンド32例 (3)ピーナツとマカデミアナッツ 11例 (4)イクラとサケ 10例 (5)イクラとタラコ 24例について検討した。IgE阻止試験は、液相抗原でIgE抗体を測定するオリトンIgE(日本ケミファ)を使用し、competition assayで測定した。(1)イクラ特異IgE抗体陽性者において、鶏卵白・イクラ間とイクラ・タラコ間とイクラとサケ間、(2)ピーナッツ特異IgE抗体陽性者において、ピーナッツ・アーモンド間、マカデミアナッツ間で交叉反応性の有無について検討し、その頻度を検討した。(1)鶏卵とイクラ:交叉反応性は認めなかった。(2)ピーナッツとアーモンド:10%交叉が59%、40%交叉が25%に認められた。(3)ピーナツとマカデミアナッツ:10%交叉が27%、20%交叉が9%に認められた。(4)イクラとサケ:10%交叉は50%に認められた。(5)イクラとタラコ:10%交叉は63%、に認められた。鶏卵・イクラ間に交叉反応性は認めず、種を超えての交叉反応性の可能性はないことが示唆された。一方、ピーナッツ・アーモンド間において強い交叉反応性を認めた。イクラ・タラコ、イクラ・サケ間も弱い交叉があるので注意は必要である。